問題:

A社(取締役会設置会社)の平取締役Yが取締役会を開かずに株主総会を招集し、そこでA社の事業の一部である化粧品事業を譲渡する特別決議がなされた。この決議に基づき、化粧品事業はB社に譲渡された。当該譲渡は有効か?

 

  • 株主総会の招集権者
    • 取締役会設置会社
      • 取締役会が決定し(298条1項4項)、代表取締役が招集する(349条1項ただし書)。
    • 取締役会非設置会社
      • 取締役が決定し(298条1項)、取締役が招集する(296条3項)
        • 取締役が二人以上ある場合、過半数で決する(348条2項)
    • 招集手続の省略
      • 株主全員の同意(300条)
        • ※株主総会決議の省略(319条)
        • 株主による召集
          • まず株主総会の招集を請求(297条1項2項3項)
          • 無視されたら裁判所の許可を得て招集(297条4項)
  • 株主総会決議の瑕疵
    • 決議取消事由(831条1項)
      • (1号)招集の手続または決議の方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正
          • 取締役会設置会社で取締役会の決議なしに代表取締役がした株主総会の招集
          • 通知漏れ、通知期間不足(299条1項)
          • 説明義務違反(314条)
          • 定足数不足(309条)
          • 通知にない事項の決議(299条4項、298条1項2号)
      • (2号)決議内容の定款違反
        • 定款所定人数を超える役員選任
      • (3号)特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議
      • ※裁量棄却(831条2項)
        • 1号の取消事由に限る。
      • ※訴訟要件
        • 原告適格(831条1項柱書)「株主等」→828条2項1号
        • 提訴期間(831条1項柱書)「決議の日から三箇月以内」
        • 被告適格(834条17号)「当該株式会社」
        • 訴えの利益の事後的消滅
      • ※判決効
        • 対世効(838条)「認容する確定判決」片面的拡張
        • 遡及効(839条かっこ書反対解釈)将来効の定めから834条17号が除かれている。
    • 決議無効事由(830条2項)
      • 決議の内容が法令に違反すること
      • ※訴訟要件
        • だれでもいつでも主張可
        • 被告は会社(834条16号)
    • 決議不存在(830条1項)
        • 決議が物理的に存在しない
        • 取締役会設置会社で取締役会決議なしに平取締役が株主総会を招集した場合
  • 株主総会決議に基づかない代表取締役の行為の効力
    • ※ケースバイケース
      • 募集株式の発行、第三者に対する有利発行では、有効説が判例
        • ∵取引の安全
  • 事業譲渡(467条1項1号2号)
    • 意義(覚えること)
      • 一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、
      • これによって、会社がその事業活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、
      • 会社が法律上当然に競業避止義務を負う(21条)結果をともなうもの
        • ←法律関係の明確性と取引安全
    • 事業譲渡するには、株主総会の特別決議が必要(467条1項、309条2項11号)
      • 特例(二つ)
        • 特別支配会社(468条1項)
          • 議決権の10分の9以上の株式を持っている会社への譲渡
            • 決議の帰趨が見えているため
        • 簡易な事業全部の譲受け(468条2項)
          • 対価が純資産の5分の1以下
            • 株主に与える影響が小さいため
    • 反対株主の株式買取請求(469条)
    • 特別決議を欠く事業譲渡の効力
      • 無効
        • ∵重要な規模の取引なので、相手方に確認調査義務を課しても不合理とは言えないから
      • 譲渡会社も譲受会社も双方主張可
        • 20年たって無効を主張することは信義則違反∴無効を主張できない(判例)
      • ※取締役会決議に基づかない代表取締役の行為
        • 相手方が決議を経ていないことを知り、又は知り得べき場合に限り、無効(民法93条ただし書類推適用)・・・株主総会の決議を欠く場合とは取り扱いが異なる。

 

答え:

1、平取締役Yが取締役会の決議を経ないで招集した株主総会による特別決議は不存在→株主総会不存在確認の訴え(830条1項)

2、株主総会特別決議を欠く事業譲渡は無効