※「募集株式の発行等」(第2章第8節)=新株発行+自己株式の処分

 

(1)手続

  • ①株主割当の場合
    • 決定機関:
      • 公開会社:取締役会(202条1項・199条1項・202条3項3号・同条5項)
      • 非公開会社:株主総会の特別決議(202条1項・199条1項・202条3項4号・309条2項5号・202条5項)
        • 定款で定めれば、取締役の決定または取締役会の決議にできる(202条3項1号・同項2号)
    • その後、通常の流れ
      • 株主に通知(202条4項)
      • 申込み(203条2項)
      • 割当決議(204条1項・同条2項)
      • 割当株式の数の通知(204条3項)
      • 申込期日
        • <現物出資でないなら>
          • 払込期日又は払込期間内に払込金全額を払い込む(208条1項)
          • 募集株式等の効力発生(209条)
        • <現物出資の場合>
          • 207条
  • ②株主割当以外(公募発行+第三者割当) ※有利発行は除く
    • 決定機関:
      • 公開会社:取締役会(199条1項2項・201条1項)
      • 非公開会社:株主総会特別決議(199条1項2項・309条2項5号)
        • 株主総会特別決議で、取締役あるいは取締役会に決定を委任できる(200条1項・309条2項5号)
    • その後の通常の流れ
      • ※取締役会決議なら、株主に募集事項を通知又は広告が必要(201条3項4項)
      • 引受の申込をしようとする者に対する募集事項等の通知(203条1項)
      • 申込(203条2項)
      • 割当決議(204条1項2項)
        • 取締役会非設置会社で、譲渡制限株式なら、株主総会は特別決議(204条2項・309条2項5号)
      • 割当株式の数の通知(204条3項)
      • 申込期日
        • <現物出資でない場合>
          • 払込期日又は払込期間内に払込金全額を払い込む(208条1項)
          • 募集株式等の効力発生(209条)
  • ➂株主割当以外で有利発行
    • ※有利発行(199条3項)とは?
      • 有利発行規制の趣旨(株主保護)と資金調達の必要性との調和の観点から、
      • 公正な価額(新株発行による資金調達の目的が達成される限度で、既存株主にとり最も有利な価額)と比較して特に低い金額をいう。
        • ※考慮要素は与えられた事実を抽象化して示す。
    • 決定機関:
      • 公開会社でも株主総会特別決議(199条1項2項・201条1項・199条3項)
        • ※違反は210条1号の法令違反
    • その後の流れ
      • ②と同じ
        • ただし、株主総会で理由を説明しなければならない(199条3項)

 

(2)新株発行差止の訴え=株主個人の利益を守るための訴訟

  • 原告適格
    • 株主名簿が基準(130条)
  • 訴えの利益
    • 新株発行後は新株発行差止の訴えの訴えの利益は失われる
      • ※新株発行後は新株発行無効の訴え(828条1項2号3号)によるべきなので、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴え(830条2項)は確認の利益を欠く。
  • 差止事由
    • 法令又は定款違反(210条1号)
      • それぞれに必要な決議がないとき
      • 199条5項違反、定款に規定のない種類株式発行、株主割当において通知を欠く場合(202条4項)等
    • 「著しく不公正」(210条2号)
      • 募集株式の発行等が特定株主の持株比率を低下させ、現経営陣の支配権を維持することを主要な目的としてなされたとき(主要目的ルール)
        • 株主個人の利益と会社の資金調達の必要性の調和の観点から
      • ※敵対的買収者による買収に対する防衛手段として募集株式の発行等が行われる場合、不公正発行に当たらないとする考え方もある。

(3)新株発行無効の訴え

  • 出訴期間(828条1項2号3号)
  • 原告適格(828条2項2号3号)
  • 無効原因
    • 取引安全の見地から、重大な法令・定款違反に限る
      • 具体例:
        • 定款所定の株式総数(113条)を超える募集株式発行
        • 定款の定めのない種類の株式(108条)の発行
  • その他の無効原因
    • ※募集株式の発行等の差止仮処分命令を無視して募集株式の発行等がされた場合
      • 差止請求を認めた趣旨を没却するので無効
    • ※公開会社における募集事項の通知・広告(201条3項4項)を欠く発行
      • 通知・広告は、株主に新株発行差止請求権の機会を保障する目的
      • 差止請求しても差止事由がないためこれが許容されないと認められる場合でない限り、
      • 新株発行の無効原因となる。
  • 無効原因にならないもの
    • ※必要な決議(取締役会・株主総会)を欠く募集株式の発行等
      • 無効原因とならない
        • ∵募集株式の発行等は、授権資本制度(201条1項、200条1項参照)の下では、組織上の行為ではなく取引行為といえる→取引の安全を確保すべき要請が強い
          • ただし、代表権ある者が新株発行したことが大前提
    • ※著しく不公正な発行(例:支配権維持目的)
      • 無効原因とならない
        • 代表取締役が発行した以上、有効な新株発行である。∵取引の安全